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【症例】ジルコニアセラミックとマウスピース矯正を用いた噛み合わせ治療と前歯の審美治療
2023.11.30
治療内容 | ジルコニアセラミックとマウスピース矯正を用いて、噛み合わせの治療と前歯の審美治療 |
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期間 | 2年6ヶ月 |
治療回数 | 67回 |
費用(施術当時の料金) | 1,953,600円(税込) |
治療前の状態・主訴
患者様は40代の女性の方です。奥歯と顎が痛いとのことで、ご親族の方の紹介で、当院へ来院されました。
左上の奥から2番目の歯が膿んでしまっており、顕微鏡で確認すると亀裂が入っている状態でした。まずは歯の根の治療から始めました。治療後は痛みもなくなり、膿も止まったため、一度被せ物を入れて、こちらの歯自体は経過観察をすることとなりました。
また、顎の不調和があり、顎関節症を併発していました。顎の不調和は噛み合わせから来るものです。上記の写真を見て頂いてもわかるかと思いますが、前歯同士が全く当たっておらず、奥歯から3本しか噛むことができてない状態でした。
学生の時に矯正治療を受けたそうなのですが、治療後に後戻りをしてしまい、そのまま放置してしまっていたとのことでした。
以前、上の前歯を治療した時に、再度矯正治療をすることも勧められたそうなのですが、その時は時間もなく、矯正治療は見送っていたそうです。
前歯は物を噛みちぎる役割の他に、顎の動きをコントロールする役割を持っています。上記のように前歯同士が当たっていない状態ですと、奥歯がその役割を担うことになります。しかし、奥歯は力の中心となる顎関節から近いため、強くものを咬める反面、横揺れの力には弱い構造となっています。そのため、前歯の役割を奥歯に負担させると、途端に顎の不調和や奥歯の破折などの症状が出てくるようになります。
今回は、奥歯の治療だけではなく、このような状態を改善するための治療が必要となることを患者様にお話ししました。このままでは、将来的には顎関節症の悪化と、根の治療をした奥歯の破折が懸念されるため、矯正治療も含めた包括的な治療をご提案しました。
ご本人も、以前から前歯が噛みづらいことを気にされていたようで、これを期に全ての治療をしたいとのことで、当院で治療をさせていただくこととなりました。
治療詳細
今回の症例は噛み合わせの不調に対して、補綴処置(被せ物の治療)と矯正治療を用いて長期間にわたり治療を行いました。このように全体的に治療を行っていく場合は、患者様一人ひとりに対し、治療の順番を考えながら治療していく必要があります。
治療をした結果、”見た目は良くなったが噛めなくなってしまった”、”噛み合わせは良くなったが前歯の形が歪なものになってしまった”、などといったことがあってはいけません。
本症例についても、見た目と噛み合わせのバランスを取りながら治療を行っていきました。
治療を行いながら、日常使用で問題がないかどうかを常に確認し、微調整を繰り返し、最適解を探していくため、非常に時間がかかる治療になります。患者様に協力していただきながら、患者様と当院の二人三脚でゴールに向かって進んでいきました。
矯正治療
まず、下の前歯の部分はマウスピース矯正を行いながら歯並びの改善を行い、上の歯は全て削って差し歯にし、一度、全ての歯に仮歯を入れました。上の歯を仮歯に変えることで、全体的に咬合を当てるように調整していきます。同時に少し噛み合わせが高い状態でしたので、そちらも調整しました。
この段階で、顎関節症の症状がかなり改善されたため、顎の位置はこの位置で決定し、矯正治療を進めていきました。
当初は、下の前歯もある程度矯正治療で動かした後に全て削ってセラミックに変える予定でした。しかし、思いのほか歯の動きがよく、ある程度噛み合う状態にまで改善しました。
ご自身の歯を残すことができるならそれが一番なので、今回は下の前歯は削らずに矯正治療を終え、その状態で噛み合わせを作ることとなりました。
補綴治療
矯正治療終了後、残っている下の奥歯を全て仮歯に変え、最終的な噛み合わせのチェックを行いました。
あとは、上の前歯を下の前歯に合わせつつ、審美的に仕上げていくことになります。
治療開始当初は、下の前歯も削り、少し長さを出してバランスを取る予定だったのですが、下の歯は矯正治療のみで終了させることになりました。
よって上の仮歯で全てのバランスを取る必要があり、ここが今回一番難しく、悩んだ点でした。
理想的な噛み合わせを与えようとして、最初の仮歯を作成したところ、長い形となってしまい、発音に障害が出てしまいました。仮歯を調整し、使用してもらって調整、という流れを何度も繰り返し、審美性と機能性のバランスを取ることのできる位置を模索しました。
最終的には、なんとか審美性と機能性を両立させることができました。最終段階の仮歯を作成し、最終調整を行いました。
最終調整
この間に、根の治療や他の虫歯の治療など、諸々の基本的な治療は同時並行で行いました。
最終的な被せ物は、一気には入れずに奥歯から被せ物を被せていって、最後に前歯のセットを行いました。
こうすることで、仮歯で作り上げた噛み合わせの環境を極力変えることなく完成させることができます。
治療後の様子
完成までに長い時間がかかりましたが、審美的にも美しく、機能的にも安定して使用していただくことができ、患者様も非常に喜んでおられます。
今回は矯正治療を同時に行なっているため、後戻りに対する固定が非常に重要になってきます。
基本的には、矯正は動かした期間だけ固定をするのがセオリーなのですが、成人矯正の場合、夜はずっとマウスピースをつけてもらう形で固定をし続けます。これは、十代の矯正治療と違って骨が完成してしまっているため、元に戻ろうとする力が強いためです。
また、今回の患者様は、もともと食いしばりが非常に強い方でした。天然の歯と被せ物の減り方は違うため、このような場合では、定期的にメインテナンスで噛み合わせの調整をしていかないと、バランスが崩れることがあります。
よって、数年間に一度は微調整を行なっていくことが必要になります。
主な副作用・リスク
・予後を完全に保証するものではありません
・自由診療での治療となります
・歯の萌出方向・残っている量によっては神経を取らないといけないケースがあります。
・治療終了後にしみる症状、咬むと痛いなどの症状が出る場合があります
・矯正治療は固定をしっかりとしないと後戻りすることがあります。その場合、再度の矯正治療には別途費用がかかります。
顎の位置(顎位)を変える難しい治療も丁寧に、確実に対応します
今回のケースは、矯正を含めたため、非常に長期にわたる治療時間となりました。
本来、人が持っている顎位を変えることは容易ではありません。また、噛む位置は人それぞれで違うため、セオリーが通用しないケースも多々あります。
当院では、仮歯やマウスピースなどを日常的に使用してもらい、すり減り具合を見ながら、普段どのように顎を動かしているのかを観察し、調整をしています。
多少お時間はかかってしまいますが、この方法が一番確実で、安定するように感じられます。
みらい歯科では、様々なケースにご対応できるよう、患者様に治療の選択肢をご提示しております。
以前矯正治療していたが後戻りしてしまった、うまく噛めないなど歯やお口周りにお困りの症状や気になることがございましたら、どんな些細なことでも構いませんので、どうぞお気軽にご相談ください。
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みらい歯科 院長 出口 真太郎